
好きなことに没頭するのが変態なんですけども、
没頭するだけでなく、
好きなものを布教して、新しい変態を生み出すのも、
変態の大事な役割なわけであります。
同じものを好きな人が増えるって嬉しいじゃないですか。
初対面でも、好きなものが同じなら、親友かのように一気に打ち解けられます。
いつかこのブログの読者と会ったときのことを考えて、
僕が人見知りしないように、
今のうちに、僕がハマりにハマってるイチオシの漫画を布教しておきますね。
BLUE GIANTっていうジャズ漫画なんですけど、
ジャズのおしゃれなイメージとは裏腹に、1集の1話から泣ける激アツ漫画となっております。
ジャズの知識皆無でも、めちゃくちゃ楽しめます。
僕もジャズを聴いたことなかったんですけど、
めちゃくちゃハマりましたし、
危うくサックスを買いそうになりましたが、
熱さまシートでおでこを冷やしたらなんとか冷静になれました。
ザ・少年漫画のような、王道のストーリーが好きな人はハマると思います!
重要なストーリーを避け、ネタバレには配慮しましたが、
全く予備知識がない状態で読みたいという人は、
お気をつけください。
目次
「オレは世界一のジャズプレーヤーになる」
ジャズの話と聞くと、お金持ちのお坊ちゃんが音大に入学して、
ライバルと切磋琢磨するイメージだと思うんですけど、
この漫画は、お坊ちゃんは一切出てきません。
僕も読む前は、繊細な漫画なんかなと思ってたんですけど、
読んでみたら、全くの真逆でした。
1話目からアツすぎて、一気にハマりました。
電車で読まないことをオススメします。
花粉症だと言い訳しないといけなくなるので。
主人公の宮本大は、普通の高校生で、
しかも、軽音部や、ブラスバンド部ですらない。
ただのバスケ部員。
空いた時間に、たったひとりで河原でサックスを練習します。
音大でも、ブラスバンドでも、軽音でもないのなら、
さすがに、ライバルのひとりぐらい出てくるのかと思いきや、
5集まで、全く出てきません。
全部で10集なので、半分は大ひとり。
河原で孤独にサックスを吹き続ける大。
周りにジャズを知ってる人なんかおらず、理解されるどころか、軽音部からはバカにされる始末。
それでも、雨の日も、雪の日も、大晦日も正月も、サックスのメンテナンス以外、毎日吹く。

夏はクソ暑くて汗が止まらない上に、夕方は蚊が飛び回ってるし、
冬は手がかじかんで練習どころじゃない。
サックスもキンキンに冷えて間違いなく霜焼けになるのに、
それでも、頭に雪を積もらせながら吹き続ける。

そんなことできる?普通。
仲間がいる部活ですらサボりたいなと思うのに、
ひとりとか俺には絶対ムリ。
体を動かすサッカーですら、冬は震えるのに、
唇を切っても、リードから絶対に口を離さない。
いつか世界一のジャズプレーヤーになるために、
今日もサックスを吹く。
それがこの漫画の主人公、宮本大です。
夢じゃない、きっとだ
大はひたむきでアツい男なんですが、
もっとすごいなと思うのは「信じる力」です。
まるで疑うことを知らない3歳児のよう。
もし、失敗したら。
もし、努力が無駄に終わったら。
もし、才能がなかったら。
毛ほども考えない。
言葉を聞けばわかります。
「世界一のジャズプレーヤーになりたい」
ではなく、
「世界一のジャズプレーヤーになる」
「夢は世界一のジャズプレーヤー」
ではなく、
「夢じゃない、きっとだ」

自分が世界一のジャズプレーヤーになることを信じて疑いません。
酔っぱらいの戯言も心から信じる大
大は、よっぽど自信家なんかなと思うんですけど、違うんですね。
大は自分だけじゃなく、誰でも、何でも信じます。
いつものようにジャズバーで他のプレイヤーの演奏を聴いてる大。
ウイスキーを片手に、椅子から崩れかかってる酔っぱらいを見つけます。
家の方向が同じだった大は、送ることに。
すると帰り道、酔っぱらいがぼやくんです。
俺はアルトサックスの天才プレーヤーだったと。
さらには、ジャズの黄金期を支えたスタープレーヤーともセッションをして、
自分のあまりのうまさに、相手がビビってたとまで言い切ります。
普通なら、ハイハイおじいさんいい夢見たねと流すところを、
大は「オレは、信じます」と断言する。
「オレは、オレのなりたいものに必ずなるって信じないと、
そうじゃないとなれないから。」
いいセリフや。
ただ盲目的に全てを信じているのではなく、
目的のために覚悟を決めて、信じてる。
現実が見えてない、ただの自信家じゃない。
きっとこの強さが、音になって表れるんでしょうね。
「この人たちの音楽に救われる日は来ないと、どうして言えるんですか?」
いつもの河原での練習の帰り道。
ストリートミュージシャンを発見する大。
すると今度は別の酔っぱらいが登場。
「ヘタクソ!」と、そのミュージシャンに向かって、
綺麗な酔っぱらいウザ絡みムーブを決めます。
すかさず止めに入る大。
「ヘタクソなんかじゃないですよ!」と、
ミュージシャンの味方について、ビシッと酔っぱらいを注意するのかと思いきや、
「ヘタの何が悪い。」と、ヘタクソなことは否定しない。

「オレら・・・そんなに・・・ヘタ!?」と、
ミュージシャン涙目。

でも、そこからがやっぱり大。
「この人たちの音楽に救われる日は来ないと、どうして言えるんですか?」
今はヘタクソかもしれない。
でも、いつかは上手くなって、たくさんの人を救うようになるかもしれない。
雀の涙もない可能性かもしれないけど、それを本気で信じてる。

同級生が受験に落ちたときも、
家の事情でピアノを続けられなくなった、会ったことのない女の子でも、
壁にぶち当たってるバンドメンバーも、
ジャズそのものも、
全てを信じるから、
当然のように世界一のジャズプレーヤーになることも信じれる。
大の成功を誰もが信じてる
大は、とにかく信じます。
自分のために。
大のそんな姿勢は周りの人にも伝わるのか、
誰ひとりとして、お前はジャズプレーヤーになれないと言いません。
それどころか、登場人物のほとんどが大が成功すると信じてます。
きっと、大の普段の行動がそう思わせるんでしょうね。
心から自分の成功を信じ、ひたむきに努力を重ねる大。
自分だけでなく周りの人も全員信じる姿に、何も感じない人はいません。
「世界的に活躍するジャズプレーヤーの、一枚目のサイン色紙なのよ。」
大が文化祭でジャズを演奏したときのこと。
軽音部からは完全に見下されていて、
ジャズで全校生徒が盛り上がるなんて誰も想像していませんでした。

それが蓋を開けてみれば、拍手喝采、
みんな肩を組んで、校歌を大合唱。


音楽を信じてるはずの、音楽の先生ですら、
生徒がジャズに熱狂するなんて思ってなかった。

音楽を信じることを教えてもらった先生は、
大にサインをお願いします。

個人的に、このシーンめちゃくちゃ好きです。
こんな先生おったなあという、先生のキャラクターも最高ですし、
「世界的に活躍するジャズプレーヤーの、一枚目のサイン色紙なのよ。」と、
本人を目の前に断言する絶対的な信頼。
泣けます。
外でこれを書いてる今も危ない。
みんなに信頼され背中を押される大
気になっていた女の子にも、
同級生にも、


近所のパン屋さんにも、
父親にも
バンドメンバーにも、
みんなから信じて、背中を押してもらえる大。
大が自分やみんなを信じ、
みんなが大を信じる。
すると、大は前よりもっと強く信じられるようになる。
現実世界でも、成功する人たちは、
こういう信頼のループを育ててるんでしょうね。
ジャズが好きだからサックスを吹く
努力家で、全てを信じる大。
ここまでだと、よくいる努力型の主人公かなと思うんですけど、
それともちょっと違っていて、なんていうかギラギラしてないんですね。
それは、大がジャズをやる理由に関係してるのかなと思います。
大がジャズを演るのは、ジャズが好きだから。
大がジャズを好きな理由。
それは、音で感情を言えるから。
楽しいとか、嬉しい、悲しい、怒り、どんな感情も音で表現ができる。
音で感情を言える、アツくて激しいジャズが好き。
音楽センス皆無な僕からしたら、「?」が10個ぐらい並んでしまうんですけど、
大は、音から感情を感じとる感性が備わってるようです。
世界一のジャズプレーヤーになるとは言ってるけど、
有名になりたいとか、お金持ちになりたいという欲求は彼からは感じません。
ただ自分の信じるジャズの魅力をみんなに知って欲しい。
自分の感情を音楽に乗せてみんなに聞いて欲しい。
ジャズが好きで、ジャズを信じてるから、
雨の日も、雪の日も、大晦日も正月も、サックスをメンテナンスに出してる時以外は、毎日吹く。
変態です。
音でウソはつけない
河原で練習するときは、「俺は世界一のジャズプレーヤーになる」と自信満々な大ですが、
初めて友達に聞いてもらうときは、流石に自信がなかったようで、
「世界一のジャズプレーヤーになる」と宣言するのではなく、
「ジャズプレーヤーになりたい」と控えめ。

でも、大のアツい本心は、音を通して友達に伝わり、
友達の方が「”世界一”の医者になる」と宣言。
きっと大は、このとき初めて、ジャズの力を実感したんじゃないですかね。
河原で吹いてるだけで、ゴールへの道は全く見えないけど、
ジャズには、とてつもない可能性が秘められてると気付いた。
大は必ず世界一のジャズプレーヤーになる
これがまたこの漫画のアツいところで、
実は、大がジャズプレーヤーとして成功するのは最初からわかってるんです。
単行本の最後に、ボーナストラックというインタビューページがあります。
このボーナストラックは、何年後かはわかりませんが、本編より未来の設定で、
その未来では、大は世界で活躍するジャズプレーヤーになってるようです。
イチローの小学生時代のコーチにインタビューをするような感じで、
作中の登場人物にインタビューをするというコーナー。
今まさに読んだお話を、登場人物が思い出話として振り返るシーン。
これがまた泣かせるんですよ。





あなたがBLUE GIANTを読んでくれてると信じてる
いろいろ書いたんですけど、BLUE GIANTの魅力はまだまだこんなもんじゃないんで、
大以外にも魅力的なキャラクターはたくさん出てきますし、
何度読み返しても目頭が熱くなり鼻がツーンとくる、
読めば読むほどハマるスルメのような漫画で、
僕は今後も、ことあるごとに読み返すと思うんですけど、
たぶん、全魅力の3%も伝えられてないんで、
この記事を読んで少しでもいいなと思ったら、
まじで!読んで!!