「お金の壁」 時給300円で働くと人間は10歳老けることを学んだ日

 

「組織の壁」で就職に絶望したものの、就活を放り出すなんて思ってもいませんでした。

ですが、この「お金の壁」にぶち当たっていよいよ、大学を卒業したら就職するという当たり前のことに疑問を抱くようになったのです。

 

 

か、嚙まれた―!!!

 

左肩を、後ろから、ひげもじゃのおっさんに、噛まれた・・・

 

僕の肩を噛んだひげオヤジは何事もなかったかのように、居酒屋のホールへと消えていきました。

 

僕は住宅街にひっそりとたたずむ洒落たフレンチ居酒屋で、アルバイトをしていました。

ひげオヤジはそこのキッチンの責任者。りんごのように赤く火照った丸顔で、ニコっとした笑顔はどことなくバイキンマンに似ていました。

 

営業も終わり、翌日の野菜の仕込みをしていると、背後に気配を感じ、次の瞬間肩に硬い感触が・・・

一瞬、なにが起こったか理解できませんでした。

理解したころには、ひげオヤジはすでに、お客のいない薄暗いホールへと消えたあと。

 

怒ればいいのか、笑えばいいのか、怯えればいいのか、いろんな感情がぐちゃぐちゃに。ただその場に突っ立っていることしかできませんでした。

 

え、もしかしてだけど、狙われている?

 

確かに、距離がやたらと近いなと思っていました。普通に口で教えてくれればいいのに、後ろから一緒に包丁を握るかのような距離感。

肩をポンポンとするボディタッチは毎日のようにありました。おっさんというものは力加減が下手なのか、1mmずつ背が縮ん出るんじゃないかと心配しました。

 

自分で言うのもなんですが、気に入られている自覚はありました。普通のアルバイトとして・・・

 

初めてのアルバイトで、学校終わりにちょこっと働いただけで、大金がもらえることに感動していましたから、やる気は十分。

 

しかも、ちょうど一人暮らしを始めたところで、食費を浮かすためにと料理が学べるキッチンを志望。

毎日新しい発見のあるこのバイトをすごく気に入ってました。

 

そこには見たことのない野菜がたくさんありました。包丁の使い方ひとつとっても知らないことがたくさん。包丁の扱いが上達するのですら楽しかった。

 

一番衝撃的だったのは、切る前の牛の舌ですね。キレイな薄ピンクの薄切り肉とは似ても似つかない、どす黒くて巨大なグロテスクな物体でした。

鍋に浮いているソレを初めて見た時は、何かわかりませんでした。マジでエイリアンの頭みたいな形をしてて、本気で気持ち悪かったですね。

苦労してむいたなあ、牛の舌の皮。笑

 

ひげオヤジにとっては面倒な仕込みも、僕にとっては貴重な料理の勉強でした。あれもこれもと言われるままに働いていました。

 

バイトの先輩は、ひげオヤジの仕込みまでやらんでいいのにと、僕を気遣ってくれましたが、暇だったのと、やることがなくなればひげオヤジがホールに消えることがわかっていたので、積極的に手伝っていました。

 

楽しく働いていただけなのに、おっさんに別の意味で気に入られるとは・・・

笑顔を見るたびに、身体の芯が冷たくなり震えました。

 

そしてこのバイト先には、もうひとつ問題がありました。

 

給料の未払いです。

 

10時以降の時給は25%上乗せされるはずが、通常の時給とまったく同じ。上乗せされる分が払われていませんでした。

 

さらにそのころ、お店があまりにも暇すぎて、つぶれるんじゃないかという噂もありました。

 

いよいよやばそうだと判断したのか、ひげオヤジが僕に言いました。

 

「労働基準監督署に行ってきたら?なんかガサ入れしてくれるみたいやで」

 

社員の給料はどうなっていたかわかりませんが、ひげオヤジに言われるままに、給料明細を握りしめて隣町まで足を運びました。

 

なんとかつぶれる前に、きちんと給料を払わせてやる。こちとら職場で肩まで食われてるんだ。保険が適用されてもいいぐらいだぞ、と謎の強気で静かなオフィスに足を踏み入れました。

 

ところが、手書きの給料明細を見せたところ、項目が適切でなく、10時以降に働いたことが立証できないと言われてしまいました。

オーナーに支払いを強制することもできないと。

 

おいおい、話が違うじゃねーか!ひげオヤジ!!

 

こうなったら直談判するしかないと、たまたまお店に顔を出したオーナーに特攻。

しかし、見事に玉砕。

払うつもりはないときっぱりと言われてしまいました。

ただのバイトにはどうすることもできず、泣き寝入りすることに・・・

 

労働者は誰にも守られない弱い存在なのだなと感じました。いざというときにはどうすることもできない。

裁判を起こそうにも、費用のほうが高くついて終わりです。雇用主はその辺を熟知しているので、ギリギリのところを嫌らしくついてきます。

 

学生だったからまだよかったものの、家族がいたらと思うと恐ろしすぎます。ひげオヤジは大丈夫だったのだろうか・・・

 

間もなくお店は潰れ、僕は晴れてニートとなったのでした。

 

ところが後日、給料の件も忘れかけたころ、ひげオヤジから突然の着信。

言うまでもなく無視をしたのですが、某ホラー映画の恐怖をリアルで味わうとは思いもしませんでした。

 

 

あれだけ、仕事熱心だった僕も、バイトがなくなったことをきっかけに堕落していきました。

ニート最高でした。学校が終われば何も縛るものがない。

 

毎日のようにお酒を飲みまくりました。家にリキュールを何本もそろえてカクテルを作って楽しんでいました。学校の実験中、無意識に消毒用のアルコールのにおいをかいでいたときには、本気でアル中を覚悟しました。

 

そんな自堕落な生活が長く続くはずもなく、間もなく貯金が底をつきました。

 

お酒のことばかり考えていたのが、今度はお金のことばかり考えるようになりました。

トイレの水を流すのにもお金がかかると、自分のクソを気持ちよく流すこともできませんでした。情けなくて涙が出そうになりました。

冷蔵庫の温度も弱にしました。冷蔵庫の食材がそのまま僕の寿命でした。食材が減るたびに、心が重くなりました。

 

お金がほしい。死ぬ。

 

愛があればお金はいらないとかいうけど、あれは嘘だと身をもって知りました。

 

愛より飯。

 

つまり、金。

 

そんな強烈な経験から、僕はお金に強く執着するようになりました。

こんな経験二度としてたまるか。絶対にお金持ちになってやる。

 

そう意気込んで決まった、次のバイト先の焼き鳥屋が、まさかの超絶ブラック。

手渡しの給料袋がやけに軽いなと思ったら、入っているはずの小銭がなく、またかと思いました。

 

バイト以上にブラックだったのは社員でした。

もはや、お店で暮らしているんじゃないかと思うぐらい。誰よりも遅く帰宅するのは当たり前。明るくなってから店を出ることも多かったといいます。

 

週末で大忙しだった翌朝、大学に行く途中にお店に寄ると、早朝に帰宅したであろう社員はすでに出勤していて、黙々と仕込みをしていました。

朝ごはん食べてないんですと言うと、上司には内緒やでと、ぱぱっと食事を出してくれました。優しさが心に沁みました。

 

バイト先には社員は2人いたのですが、食事を出してくれたAさんは、明らかに上司のストレスのはけ口になっていました。

営業中ミスがあれば、怒鳴られ。片付けをしているときも、みんなの前でけなされていました。

 

ただでさえ忙しくて身体はぼろぼろなのに、精神的にも追い込まれているのは目に見えてわかりました。

僕と2、3歳しか年齢は変わらないはずなのに、10歳は老けて見えました。優しい言葉とは裏腹に、表情はいつもしんどそうでした。

 

長時間働きすぎて、給料を時給換算したら300円だと言っていました。

 

学園祭実行委員やアルバイトを通じて、働くとはどういうことか理解しました。

趣味や遊びを犠牲にして捻出した時間は、無意味な会議や出来レースに消費され、ただでさえ少ない給料も、会社が払わないと言ったらあきらめるしかない。

上からは、意味の分からないルールを押し付けられ、他人に隙を見せないように、ミスに細心の注意を払わなければならない。そして、おかしいと意見をしても前例がないからという理由で却下される。

 

僕は、いよいよ就職したくなくなりました。意思を持たない機械のように使い捨てにされるなら、ニートのほうがましだと思いました。

 

でも、二度とあんな思いはしたくない。

 

いったい、どうすればいいんだ!!

 

将来の方向を完全に見失っていた僕は、暇つぶしにKindleでセール中の本を読んでいました。

その本には信じられない内容が書いてありました。

  • 不労収入だけで生活できるので、普段お金のことをまったく考えない
  • 焼肉を食べに韓国に飛ぶなど、好きなことだけをして生きている
  • 労働はおまけで家族との時間が中心の生活

 

この世にはどうやら、僕の知らない世界があるようだぞと思いました。

 

新しい世界の光を見た僕は、吸い込まれるようにして近づいていくのでした。

 

僕が見た光は、希望の光なのか、はたまた怪しく光る地獄の光なのか。

 

第3章 好きなことをして自分らしく生きる

 

 


 

~プロフィール~

第0章 人生に挫折した日

第1章 「組織の壁」理想のキャンパスライフのはずが・・

第2章 「お金の壁」時給300円で働くと人間は10歳老けることを学んだ日

第3章 就職せずに好きなことをして自分らしく生きる

 

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